沖縄の宿で困っていたのは、私たちでした。
私たちは、沖縄で二つの宿を営んでいます。ゲストを迎えるのが好きで始めた仕事でしたが、実際にその時間へたどり着くまでに、掲載も、管理画面も、メッセージも、チェックインも——数えきれない手間が立ちはだかっていました。困っていたのは、ゲストではありません。まず、私たち自身でした。
宿の運営がひとつの流れ、循環するものとして見るようになったのは、これらの困りごとを理想系から捉え直そうと客観的に見直したからです。予約が入り、掲載を整え、メッセージが届き、清掃が入り、ゲストを迎え、送り出す。関わる人も工程も多いけれど、どこかで詰まれば、全部が詰まる。だから私たちが大事にしているのは「増やすこと」より「詰まらせないこと」——流れが整えば、ゲストも、私たちも、まわりで支えてくれる人たちも、気持ちよく過ごせるはずだと考えました。
はじめは『ツールを作ろう』と考えていました。けれど、ツールがただ使うもの・使いこなすものだとしたら、私たちがつくりたかったのは、手に馴染ませて、いつしか自分たちの一部のような感覚で使っていくもの。だからこれらを『道具』と呼んでいます——そのあり方が、私たちのありたい姿と重なっているからです。
最初につくったのは、自分たちのための道具でした。掲載がほんとうに合っているのか見極める道具。開くたびに気が重かった管理画面を、朝ひらきたくなる窓に変える道具。24時間、人肌のまま質問に答え続ける道具。旅先でいちばん面倒な手続きだったチェックインを、確認するだけの一歩目に変える道具。どれも、他社に売るために考えたものではありません。まず、自分たちの宿で、今日も使っています。
だから、私たちが目指しているのは一つではなく、二つの体験です。ゲストにとって気持ちのいい滞在と、宿を営む私たちにとって無理のない毎日。どちらか一方を良くするための道具ではなく、両方が同時に整うことを、いつも基準にしています。
会社そのものは、東京にあります。けれど、私たちが実際に宿をひらき、ゲストを迎え、日々の運営でこれらの道具を生み出し、磨いているのは、沖縄の二つの家です。机の上で考えた仕組みではなく、今日も自分たちが使っている道具だけを、お届けしたいと思っています。
困っていたのは、ゲストではなく、私たちでした。だから、まず自分たちのために作りました。